共催シンポジウム 登壇者コメント

ilovepdf_com2018年6月17日、シンポジウム「湘南ひらつか野外彫刻展のゆくえ 岐路に立つ彫刻」が開かれました。第2部のパネルディスカッションより、登壇者で湘南ひらつか野外彫刻展大賞受賞者である中村ミナト氏のコメントを掲載いたします。

 

作者の立場で申し上げます。

その当時、神田にありましたときわ画廊で彫刻の発表を続けていました。そこで湘南ひらつか野外彫刻展の募集を知り、応募しました。マケット審査—実制作—賞選考と云う図式のコンペティションで、1/10のマケットを提出しました。幸運にも入選し実制作に入ることになりましたが、高さ36cmの模型を3m60cmの実作品へと、10倍に拡大するにはそのギャップが大きく、内包する空間をもって空間を截り外への広がりを見せたい、との思いがありましたので、1/10、1/5、1/3と段階を追ってマケットを大きくし、細部まで自分で納得した上で実制作に入りました。50個以上のパーツをボルトで繋ぎ、形にした作品でした。友人の大きなアトリエを借り、そして力も借り制作にかかりました。また、構造計算を建築の専門家に依頼し、倒壊事故の無いように念には念をいれ、地中にアングルを組みその上に作品を固定しました。平塚市総合公園にクレーンを使い組み上げると云う大掛かりな作業でした。

平塚市総合公園での展覧会で大賞をいただき、私の彫刻は平塚市庁舎の前庭に設置されました。移動の際は、解体せずそのまま基礎ごと、早朝に道を通行止めにして移築したと聞きました。その折には、方向、位置確認指示のため平塚市庁舎まで出向いたように記憶しています。平塚に住む知人に前を通るたびに見ていると言われ誇らかな気持ちでした。

設置から20年以上経ちました。その間、何度か自分の作った彫刻に会いにきました。作品は作者の分身です。アルミの腐食が心配で来てみたり、何か構造上の変化は無いか確認にきたり、別の知人にそんな彫刻は無かったと言われて、びっくりしてまた来てみたりしました。その時はそこにあって、ホッとしました。市庁舎が新しくなり彫刻はどうなったかと心配になりました。もちろん見に来ましたが、ありませんでした。きっと捨てられてしまったんだと思っていました。

しばらくして、偶然に出会った彫刻家に市庁舎改築のため彫刻を解体して保管してある、と聞きました。解体したものの、パーツが多くて組み立てかたが解らず困っていると云うことで、その方に再構築のために1/3模型をお見せし遠くから協力しました。その時不思議だったのは、なぜ初めに私に連絡が無かったのかと云うことでした。何年経っても作者は作品に責任を感じています。今回も再構築のみならず、テーマに沿って空間との応呼を考え、より良く表せる設置場所での位置や向きのことを立ち会って関わりたかったと思いました。

これから、ときどき折々に現状をお知らせいただきたく作者の立場としてお願い致します。

(「湘南ひらつか野外彫刻展のゆくえ 岐路に立つ彫刻」第2部パネルディスカッション、2018年6月17日、平塚市美術館アトリエA)

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